黙って選んだ雨合羽に、想いが宿っていた

朝礼での出来事 ~現場の違和感~

 現場は、社長による朝礼から一日が始まる。それは、入社して間もない梅雨の日のことだった。

ふと従業員の姿を眺めると、支給されたはずの雨合羽とは明らかに違う色やデザインのものが混ざっている。

濃紺、明るい青、グレー、黒・・・バラエティー豊かなその状況に、内心「おかしいな。」と思った。

 

 朝礼が終わり、現場へ出動。一件目の作業を終えたとき、理由がわかった。

会社支給の雨合羽は、とても不快だった。内側に湿気がこもり、動けば生地が体に張りついてくる。

激しく動く現場では、明らかに作業の妨げになる。「そりゃ、みんな自前で買うよな・・・。」そう納得せざるを得なかった。

 

本格的な調査 ~素材の選定~

 この日から、雨合羽の“なぜ”を掘り下げて調べてみた。支給されていたのは、たしかに高価で耐水性に優れた素材。

しかし「透湿性」がまったくない。つまり、水は通さないが、中の蒸気も外に逃がさない。

 

 そこで、耐水性を保ちながらも透湿性に優れた素材を何種類か取り寄せてみた。

実際に従業員にも試着してもらい、感想を聞きながら比較を重ねた。

最終的には、多少コストは上がるが「現場で本当に使える」合羽が決まった。

 

会社への提案 ~壁と提案~

 しかし、会社側の反応は冷たかった。

 

「合羽のことで、いちいち相談しないでくれ」

「そんなことを君にやってもらいたいわけじゃない」

「それ、会社が用意してるんだから」

 

 最初は、どこにも届かなかった。けれど、一枚の提案書が流れを変えた。

・長年支給してきた合羽は、現場作業には実は不向きであること

・少しコストを上げるだけで、快適に動ける装備が提供できること

この提案に、会社が耳を傾け始めた。

 

雨の日の景色が変わる ~変わる景色~

 

 しばらくすると、現場の合羽は、決められた色に自然と統一されていった。

雨合羽からの気づき

 たかが合羽、されど合羽。小さな不満や違和感に気づくことが肝要です。

会社と現場の『掛け違い』を修復することです。その積み重ねが、従業員の信頼やエンゲージメントを生むのだと、

あらためて実感しました。

 

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5cmの窓」も、そんな事例のひとつです。 [こちら]

雨合羽の選定比較(一部加工済)

不満の裏にあった現場の声なき声を、数値と実感で丁寧に拾い上げた記録。